第2話 妖術

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第2話 妖術

 家に入ろうとドアノブを握った瞬間、父から借りている大事なマイホ-ムが爆発した。ウェストの括れたお姉さんのように、ボン・キュ・ボンと家が吹き飛んだのだ。  『キュ』は、建物が再生された音だ。  家が再建したかと思えば、すぐさま消え去った。  創造的破壊ってヤツだろうか。  唯一の不動産、いや、家の残骸であるドアノブを握りしめ、途方にくれていると、後ろから袖を引っ張られた。  振り返ると、ユイに瓜ふたつの少女の姿があった。 「わたくしは妖怪ヒザかっくん。名前は『ヒナ』。ヒナかっくんとお呼びくださいですの。いえ、決して(あや)しいものではありませんの。(あやかし)ですけど。ケラケラ」  また変なのが来たな、おい……。 「姉がお世話になっておりますの」  ヒナかっくんが、俺にヒザかっくんを仕掛けてくる。  前からはヤメてほしい。 「お、おう。よろしく……そんなことより、俺の家が……」 「大丈夫ですの。お姉さまがアナタのおうちを、に建て替えていますの」 「なんで2回も家が爆発したんだ?」 「サービスですの」 「いらねぇよ!」 「冗談ですの。お姉さまは作品が気に入らなかったようですの」  俺とヒナが見守るなか、ユイによる創造的破壊(ボン・キュ・ボン)は、60分ほど続いた。
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