1人が本棚に入れています
本棚に追加
第2話 妖術
家に入ろうとドアノブを握った瞬間、父から借りている大事なマイホ-ムが爆発した。ウェストの括れたお姉さんのように、ボン・キュ・ボンと家が吹き飛んだのだ。
『キュ』は、建物が再生された音だ。
家が再建したかと思えば、すぐさま消え去った。
創造的破壊ってヤツだろうか。
唯一の不動産、いや、家の残骸であるドアノブを握りしめ、途方にくれていると、後ろから袖を引っ張られた。
振り返ると、ユイに瓜ふたつの少女の姿があった。
「わたくしは妖怪ヒザかっくん。名前は『ヒナ』。ヒナかっくんとお呼びくださいですの。いえ、決して妖しいものではありませんの。妖ですけど。ケラケラ」
また変なのが来たな、おい……。
「姉がお世話になっておりますの」
ヒナかっくんが、俺にヒザかっくんを仕掛けてくる。
前からはヤメてほしい。
「お、おう。よろしく……そんなことより、俺の家が……」
「大丈夫ですの。お姉さまがアナタのおうちを、おかしの家に建て替えていますの」
「なんで2回も家が爆発したんだ?」
「サービスですの」
「いらねぇよ!」
「冗談ですの。お姉さまは作品が気に入らなかったようですの」
俺とヒナが見守るなか、ユイによる創造的破壊は、60分ほど続いた。
最初のコメントを投稿しよう!