第2話 妖術

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 完成した建物は、お菓子の家というより、おかし家だった。  すべて和菓子で出来ているのは、どうなのだろうか。  瓦の代わりに煎餅(せんべい)を用いているところが憎らしい。  こしあん・小倉あんが壁に塗られているせいか、甘ったるい香りがする。  表札があったと(おぼ)しき場所には、『焼野原』と記された扇子(せんす)が刺さっている。  センス良いね! と、俺に言わせたいのだろう。  だが、断る!  外見がファンタジーな家は、内部も幻想的だった。  和室でどぎつい光をぶっ放すミラーボールが、オシャレさを演出。  食べたら1人増えそうなキノコが、いたるところに生えている。  床がザラついているのは胞子のせいだろうか。  得体の知れないキノコを(かじ)っているヒナの笑顔は、輝きに満ちている。  大丈夫なのか、それ?  魔王が座りそうな玉座の近くに、乾燥した何かが落ちている。  着物を(まと)ったシイタケだろうか。  床にダイイング・メッセージが残されていた。  字数は短編小説くらいありそうだ。  タイトルは、『ダイビング・メッセージ』。  長すぎて本文を読む気にならない。  全部ひらがなだし。  なんか、面倒くさい。
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