退院後

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退院後

 後日、無事退院した直輝とその両親は球団から特別招待席に招待されていた。  喜びを隠せずに落ち着きもなくはしゃぎ回る直輝の姿に、両親の目は潤んだ。  ガラス越しに球場が一望できるその場所でマウンドやダイヤモンドを眺めながらこれまでの事を回想していると、不意に扉の開く音がした。 「あ、ジロー選手だ!」  そこに立っていたのはジロー選手だった。  突然現れたジロー選手に驚きながらも、両親は深々と頭を下げた。 「この度は本当に本当にありがとうございます」 「なんといってお礼を言っていいのか、感謝をとおりこして、もう言葉が思い付きません」  腰に両手を撒きつけながら飛び跳ねる直輝の頭を撫でながら、ジロー選手は両親に微笑みかけた。 「いえいえ。僕は何もしていませんよ。手術を受けたのは直輝君ですし、それを支えたのはお二人なんですから」  そう言って謙遜するジロー選手に、堪えていた二人の涙の粒が床を濡らした。
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