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「え?あーパスポートに?ホテルの住所メモってるんですね?」
「あ、違います。これしか、持ってなくて…。」
「はい?携帯は?」
「連絡来るのが、嫌で…えへへっ。」
目の前で無邪気に笑う彼をナマで見られるとは、思ってなかった。
うちに連れて帰ったら…お母さん驚いて喜ぶかもな。
不意にそう思った私は、
「…うちと言っても、私の実家ですが行きますか?」
「はい。」
即答されるとは思ってもなくて、自分で言っておきながら驚きを隠せなかった。
「お願いします。あ、こんな僕で、失望しましたか?」
「え?いいえ。」
「よかった。」
彼の誰もを虜にする、
その笑顔に私は…。
一人…独り、
ここへ来た理由を忘れることにした。
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