第五章 彼女。

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「向こうに回ってください。」 彼女は頑として運転席の扉をつかんだままだった。 「オ…僕。が、運転します。こういうのは男に委ねた方がいいって。」 「あなた。」 「えーあなた?」 悲しそうな顔をみせてみた。 少し俺の行動に戸惑っているようだったが、しっかりと俺を見つめてくれた。 そして顔を赤くしながらも、上目遣いに…。 「ハン…。」 「うん!」 呼び捨てにされて、俺は胸が高鳴り自然と笑みがあふれ出ていた。 「さん。以外でしたらね。」 この瞬間を楽しんでくれたら、いいのに…笑顔がカワイイのに気がついてないなんて。 「さん…か。俺は呼び捨てでいいのに。」 俺のふてくされた顔での一言一言に彼女は、忙しく表情を変えて俺に魅せてくれた。 「ハンさん!は。財布も携帯もないんですよね?本当はあるけど、やっぱり番組ですか?私は海を飛び越えて韓国のバラエティー番組にでも出るんですか?…うわーって喋っちゃいましたけど、分かりましたよね?」 「うん。」 「…うっ。」 自分がどんな表情をしたらいいのか? 彼女が俺に何を求めているのか? 仕事柄なんとなくだけど、わかる…うん。多分な。 子犬のように可愛らしく返事を言ってみせた。 彼女はすぐに俺に背を向けた。 うん。だけで、そんなに喜んでくれるなら…。 俺は!?
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