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第四章 決断?
「怖いですよね?知ってる…なんて言ってごめんなさい。」
彼は申し訳無さそうにうつむき、ゆっくり顔を上げると私を見る彼が確かに存在している。
夢でも見てるんじゃないか?
これは、妄想であって…現実なんかじゃない。
「番組だったんですね?」
私を見つめる人なんて…いないはず。
「違います。」
目が覚めるほどの大きな声と、しっかりとした口調だった。
「…本当に恥ずかしいけど、迷子…なんです僕。」
「え?冗談じゃなくて?」
彼は照れくさそうに頷いて、私から視線をそらしていた。
「優子…さんが僕のファンじゃなくても…僕を知ってる人にかっこ悪くて…その、それで、かっこつけて知ってると。」
「フフッ、」
私…?いつ以来だろう?自然とこうして笑ってるなんて…。
「迷子でもかっこいいですよ。」
「フッ、内緒でお願いします。」
「はい、ホテルどこですか?送ります、あ、タクシー呼びましょうか?」
「うーん。ゆっくり…でオネガイシマス。」
「あ、ごめんなさい。」
忘れるところだった…。
「あ、いえいえ…。」
「タクシーを。」
「あ…えっと。」
彼はポケットからパスポートを取り出して、満面の笑顔を見せた。
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