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ロザリア
「フランク……」
フランクは、青白い顔をしてベッドに横たわっていた。
ロザリアは、それを見て小さく身を震わせる。
明日は最高の日になるはずだった。
なのに、それとは逆にロザリアにとって『最悪の日』となってしまったのだ。
(フランク、そんなに好きだったの?
あのシーマとかいうつまらない女のことが…)
ロザリアの心の中に、めらめらと憎悪の炎が渦巻いた。
フランクには他に想い人がいることを、ロザリアは知っていた。
しかし、相手は貧しい町娘。
フランクと釣り合うはずのない娘だ。
それに引き換え、自分は隣町でも一番の名門貴族の娘。
見た目にも自信がある。
結婚すれば、きっとフランクはそんな女のこと等すぐに忘れてくれる…
ロザリアはそう思っていたが、フランクは結婚式前夜に、死を選んでしまったのだ。
それほどまでに、その女が好きだったのかと思うと、ロザリアは激しい嫉妬の想いにかられた。
(フランクは私のものよ。
死んでもあんな女には渡さない!)
ロザリアは、フランクの亡骸の隣に身を横たえた。
(フランク…私はあなたに着いて行く…
それがたとえ、闇に閉ざされた地の果てでも…)
ロザリアは、迷うことなく、小瓶の毒をあおった。
「うっ…!」
(フランクは、私のもの……)
強い決意を胸に、呆気なく…ロザリアは短いその生涯を終えた。
*
「ロザリア様!」
ロザリアの死はすぐに使用人達の知るところとなった。
「な、なんて馬鹿なことを…!」
変わり果てたロザリアを見て、彼女の両親は泣き崩れた。
「フランク…君は一体どこまで私達を苦しめれば気がすむんだ!
この縁談は間違いだった。
ロザリア、帰ろう…こんな所にはいたくない。」
ロザリアの亡骸は、家族によって隣町の屋敷へと運ばれた。
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