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二時間ほど暇を潰してから再び家の前へ戻ってくると、先ほどの少女はいなくなっていた。諦めて帰ったのだろうか。
それでも警戒を緩めず自宅に滑り込んだが、とくに異常は見当たらず、リビングで一息をつく。
結局、誰だったんだろう。
もしかしたら不審者だと思ったのは自分の勘違いで、隣の家のおばちゃんちに姪っ子か誰かが遊びにきて建物を間違えたとか、そんな単純なことだったのかもしれないと冬馬は思った。
商店街をぶらぶらしながら間食したので腹は減っていなかったが、後から帰ってくる家人がいるので晩御飯の用意をしないわけにもいかない。男ふたり世帯、先に帰宅する冬馬が自然と料理当番になっている。
あいつは外面はいいけど、家事は何もやらないからな。
とりあえず、持ち歩くはめになった牛肉を細切りにして、肉野菜炒めにでもするかとビニール袋を開けて中身を取り出していき、最後に冬馬は天を仰いだ。
その日たまたま気まぐれに手にとったアイスが、液体と化していた。
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