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4 親を呼ばなきゃ駄目ですか
日曜日。その日の晩は、冬馬が作った鰤の照り焼きを夏樹とふたりで食した。
それから夏樹が風呂を済ませて缶ビールをプシュッと開け、リビングで目的もなくテレビをつける。彼がほどよく酔ってきた頃を見計らい――。
よし今だ、と席を立つ。
「あー、そういえばさ。学校でこんなのが配られて……」
なにげないチラシか何かのように夏樹に見せたのは、クラス担任から保護者に渡すよう課されていた、進路面談の日程希望調査用紙だ。配布されたのは先週だったにも関わらず、提出期限のギリギリまでたっぷり寝かせていた。
『※必ず、親御さんに来ていただくようにしてください』
プリントにはそんな注意書きがご丁寧に太字で書かれていたが、そう上から目線で言われてもな。
都合を聞くのが突然であれば、予定が合わずに来られないのではないか?
……なぁんて、そんな浅知恵を浮かべていたのに――。
「進路面談? 行く行く」
望んだものとは正反対の夏樹の答えを聞いて、軽く絶望感を覚えながら、冬馬はいまいちど聞き返した。
「えっ!? 来るのかよ。平日だぞ。仕事あるだろ」
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