10人が本棚に入れています
本棚に追加
5 斜め路線の進路面談
「おう、待たせたか?」
待ち合わせ場所の昇降口に、片手をあげて颯爽と現れた夏樹に、冬馬は絶対に注目を集めてくれるな、と睨みをきかせて応えた。
夏樹の後方で、わざわざこちらを覗き込んでいる女生徒たちが目に入り、気が気ではない。
「なんだか、学生時代に戻ったみたいな気分になるな」
「いい大人がはしゃぐなよな、恥ずかしい。ほら早く、こっち」
スリッパに履き替え、ブランド物の靴は布の袋に入れて携帯する。身だしなみには手を抜かない夏樹、今日もそつがない。
ダークブラウンの三つ揃えのスーツに、小紋柄が入ったネイビーのネクタイ。亜麻色に染めた少し長めの髪を、緩い天然パーマを活かすように流してセットしている。
服装は今朝、冬馬が監修し、大方そのとおりのものを身につけている。地味そうな色を選んだはずなのに夏樹が身に着けると華やかに見えるのは何故なのか。
ネクタイは冬馬が選んだ無地ではなく柄物に差し替えられていたが、今のほうがしっくりきているのが腹立たしい。
最初のコメントを投稿しよう!