5 斜め路線の進路面談

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 二年三組担任の斉藤洋子は独身で、「鉄の女」と言われている。  担当教科は現国。青白い細面に、似合いすぎる三角眼鏡。おそらく四十路半ば、アラフィフではないかという噂もあるが、年齢は不詳だ。  神経質でプライドが高く、反り返りすぎて肩が凝るのではと心配になるほど常に気を張って生きている。  「男に負けてはならない」という矜持があるのか、同僚男性や男子生徒に対する態度はコンクリートブロックのように硬い。  「女にも負けてはならない」ものなのか、同僚女性と女子生徒に対してもかき氷用のブロックアイス並みに冷ややかだ。  そんな性格だから生意気な高校生になめられず、クラスをまとめていられるのかもしれないが、世間的に見ればあれはコミュ障の変人だと冬馬は思っている。  洋子は冬馬を一瞥し、夏樹の前に立つと、相変わらず隙のない態度でお辞儀をした。姿勢を戻したときに逆に反り返るところが、斉藤クオリティである。 「藤川くんのお父様ですね。はじめまして」 「はじめまして。いつも冬馬がお世話になって……」 「どうぞ時間ですので中にお入りください」 「えっ? あ、はい」  おぉ、あの父がペースを乱されている。  夏樹を見て見惚れるでもなく媚びを売るわけでもなく、挨拶も食い気味に行動を促す鉄の女に、冬馬は初めて一目を置いたのだった。
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