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1 ある日の災難
ある日、冬馬が帰宅すると、家の固定電話の留守録ランプが点滅していた。
不在の間に誰かがメッセージを残したようだが、知り合いだったら大抵、携帯電話のほうに直接かけてくるはずだ。どうせ健康食品とか不動産投資の押し売り営業だろうと思いながら、冬馬はなにげなく電話機のボタンを押した。
テープが最初に巻き戻り、再生を始めた。巻き戻る時間が妙に長かったので、冬馬は「おや?」と電話機に注目した。
ノイズ音に交じって、ガサガサという耳障りな雑音が流れてくる。
(…………?)
声は吹き込まれていなかった。ただずっと通話状態は続いている。
(おい……なんだよ。名乗れよ!)
まだかまだかと待ってはみたが、無言のままの録音は途切れず続いた。
無言電話。いつぶりだろう。ナンバーディスプレイは「非表示」になっていた。
意図したものか、間違いか。それとも、こちらが出るのをじっと待っていたのだろうか。
ピーッと電子音が流れて、再生が終了した。一件あたりの録音時間の限界がきたのだ。
「……ったく、誰だよ……」
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