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静寂を破りたくて、独り言が漏れる。後味の悪さを引きずりつつも緊張を解こうとしたとき、「メッセージ、二件目です」という電子音声が流れて、次の再生が始まった。
またもや、無言。そして雑音。
おそらく、相手は外で電話をかけている。ざらざらとした風の音、何かが擦れる音。聞きたくもないのに、わずかな音の欠片を耳が拾おうとしてしまう。
三分ほど経っただろうか。それとも二分だったのか。
二件目の再生が終わって、三件目。まだ続くのか。
備えつけのテープは、どれくらいの容量だったろう。三十分? 六十分? もしかしたらテープの端まで繰り返し、吹き込まれているのだろうか――。
冬馬は愕然として電話の前から動けずにいたが、再生中の無言の音の流れの中、わずかに電話口の向こうにいる人物の息遣いを感じて、衝動的に停止ボタンを押した。
背筋をゾクリとした感覚が這い上がる。相手には聞こえていないはずなのに、今も盗聴されているような気がして、首筋の毛がチリチリと粟立った。
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