1 ある日の災難

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 きっと、たまたまだ。無差別に電話をかけて、通じたところに嫌がらせをする。そうしてリダイヤルで何度も続けたに違いない。こんなもの、気にしなければいい……だけど。  気持ち悪いじゃないか。  冬馬は不快な思いを怒りに転嫁した。  人の家に無言電話をかけたやつ、不幸になればいい!      *  不運は、重なるものだ。  翌日、冬馬は珍しく寝坊して弁当を作る余裕がなかったため、昼食は購買でパンを買うことにしていた。  四限が終わってすぐに購買へ向かうも、同じ考えの生徒たちが同時にそこへ押し寄せるから、店はそれなりに混雑してしまう。  列の最後尾に並んだが、順番を待つ間にも人気の商品は売り切れていく。なんとか焼きそばパンとメロンパンをゲットして、次は飲み物を調達しようと場所を移した。  自動販売機が並ぶドリンクコーナーは閑散としていて、待つことはなかった。  紙パックのコーヒー牛乳を選んで、のんびりとした動作で取り出し口に手を突っ込んでいると、後ろから声をかけられた。 「藤川くん……」  か細い音だったので一瞬空耳かとも思ったが、なにげなく顔を上げ、声のしたほうを振り返る。  ――しまった。  さっさと立ち去ればよかったと、後悔する。
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