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2 やさぐれたのは誰のせい
父とふたりの生活に戻ってから七年が経ち、冬馬は高校二年生になった。
今年は残暑が長引いて、十一月に入ってからようやく秋らしい風とすれ違う。十月末に中間テストを終えたばかりということもあり、学生らは中だるみの真っ最中だ。
冬馬はというと、数か月前に野球の試合中に骨折した左足が、ようやく完治したところ。
順風満帆とは言い難い二学期――不便な松葉杖にギプスの臭いも気になったし、良くなったかと思うとズキリと痛んだりもして、もう骨折はこりごりだと思う程度には長い闘いだった。
あれから野球はやっていない。
休部扱いにしているが、来年は受験だし、そこまで執着もしていないから、もう部に顔を出すことはたぶんない。
「お~す、藤川」
「うっす」
昇降口で級友の岡崎と挨拶を交わし、下駄箱の蓋を開ける。
上履きの上に、薄い桃色の洋封筒が乗っていた。
「……チッ」
思わず舌打ちが漏れる。
「なぁに? うわ、ラブレター? つか今、チッて、おまえ……」
下駄箱を覗きこんでくる岡崎をしっしと追い払い、上履きだけを引っ張り出して乱暴に蓋を閉めた。
廊下を歩き出した冬馬の後に岡崎も続いたが、気がかりそうに下駄箱を何度も振り返っては、冬馬にからかうような視線を投げてくる。
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