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そう尋ねると桜はぐっと詰まった顔をした。だが、
「もういいの。関係ないんだから。あんたたちとは、もう他人なんだから」
――他人。
そう言われて、さすがにムッとしてしまった自分は冷たいのだろうか。
テスト前にも関わらず、わざわざ来たというのに。
尻尾を振って駆け寄ろうとして、思いきり張り飛ばされた犬のような気分だった。
いっときでも家族だった者同士、手を差し伸べられればと思ったのに――けれどそれは、勝手な独りよがりに過ぎなかったのか。
なんだかもう、気持ちもなにも、めちゃくちゃだ。目を逸らしていいのなら、そうしたい。
こちらが黙っていると、桜はプイと顔を背けて、建物に戻っていってしまった。
それなら、こちらも帰るしかない。だが、それでいいとも思えた。できることはやったんだ。もうこれからは、なるようになるのだろう。
*
疲労感を抱えながら地元の駅に戻ってくると、あたりはすっかり暗くなっていた。
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