4 父という男

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 夏樹の口が、はく、とだけ動いて、空気が漏れたのがわかった。  瞳に浮かんだ失望の色は、もろ刃の剣だ。心に氷が刺さったように、こちらの気持ちも冷えている。  だが後悔はしていない。間違ったことも言っていない。  震えて裏返りそうになる喉を叱咤して。  吐いて捨てるように、相手を傷つけるためだけの言葉を投げつけた。 「卒業したら、縁を切ってやる。義務養育が終わったら、出てってやるからな!」
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