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リンゴを流しに置き、ポストから取ってきた郵便物を確認して――ビクッと震えて手を止めた。
封書類の中に、異様に厚みのある手紙が紛れていた。宛名は手書きで、夏樹宛て。女性っぽい丸い字。どうみても私信だ。
「なんだこの分厚さ。怖ぇ……」
見れば切手も貼られていない。家の前まで直接、届けに来たのだろうか。
(はぁ……。人のことは言えないけどさぁ)
冬馬は思う。ちゃんと本人が牽制していれば、女性だってここまで押しかけてはこないはずなのだ。牽制は大事。すべて父の態度が悪い。
いつか酷い目に遭うぞと毒づきながら、テーブルの隅っこに封筒を押しやった。今日も遅くに帰宅するだろうが、目につくところに置いておけば、勝手に回収するだろう。
*
「有給とった。しばらく休めって言われたから」
やつれた様子の夏樹と正面から顔を合わせたのは、それから三日後のことだった。仕事でトラブったというのは本当らしい。二度と会話したくないと思っていたのについつい声をかけてしまうくらいには、弱った風体だった。
「どうしたんだよ……」
「人事関係でちょっとな……」
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