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(お隣のおばちゃんちにも聞こえているだろうな……。また近所の噂になっちゃうよ……)
これで夏樹も反省してくれればいいのだが。
どこかすっとした気分を抱きながら、他人事として考えていた。
*
翌朝は、ゴミ出しの日だった。
通学の前に所定の場所に置いてこなければと、詰めたゴミ袋を掴んでドアを開けると、落ちくぼんだ目をした女性が玄関前に立っていて、目が合った。
「えっ……?」
「あら、おはようございます」
にっこりと笑った女性には、見覚えがある。商店街でわざとぶつかってきた、ひっつめ髪のスーツの女性――。
なんで、門の中まで勝手に入ってきてるんだろう。
こちらが言葉をなくしていると、
「部長はいらっしゃいますか。今日は会社に出られるというので、一緒に通勤しようかと」
「はぁ……えーと……」
ぐるぐると視線が定まらない。父を呼ぶか。やばいんじゃないか。どうしたらいいんだ。
間もなく様子がおかしいことを察した夏樹が、玄関先に現れた。着替えは済ませていたが、髪のセットはしていない。
「ちょ……根本くん? 何やって……」
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