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「どうして!? 私が悪いんですか!? いつもそう、私は部長のことしか考えていないのに、一緒に死ぬ覚悟だってできてるのに。どうしてわかってくれないの? 大きな子どもがいたって構わない。クソ人事に引き離されたって、これを機に結婚してくれるって信じてたのに、全部嘘だったんですか」
「嘘もなにも……僕はそういうつもりで、君に接したつもりはないよ」
「そんなわけないでしょうっ。優しくしたくせに!」
どちらも声を張り上げ、競うように怒鳴りあっている。「気を持たせた」、「持たせていない」の問答が続いて、女性はついに金切り声を上げて泣きだした。
「嘘つき! 私は騙された! 遊ばれたんだ!」
「根本くん……」
女性が、ナイフを構えた。
「部長……部長ぉ……」
夏樹のことを呼びながら、目は完全にいってしまっている。
(嘘だろ……?)
冬馬は目の前で起きているドラマの撮影かなにかのような光景を呆然と見つめながら、なおも動けずにいた。
そのとき、
「な、何してるの……?」
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