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3 許可なき訪問を禁ず
「……うわ」
冬馬は思わず呻いた。
駅から徒歩で十五分ほどの距離にある、ごく一般的な住宅街。
土地開発の際にまとめて拓かれた分譲地帯らしく、似たような色と形をした二階建ての戸建てが、みっちりと並んでいる。
その中のひとつである我が家までは十字路を曲がれば目と鼻の先だったが、角を出たすぐのところで足に急ブレーキをかけ、いったん身を引っ込めた。
自宅の前の道路に、不審な人物が立っているのが見えたからだ。
学校の制服を着た、同年代くらいの少女だ。人を待っているのか、じっとその場から離れない。
時刻は夕方五時を回ったところ。日は西に傾きはじめていた。
雲ひとつない秋空の天井は高く、周囲はまだ十分に明るかったが、密集した住宅の影が長く路面にかかり、その人物の表情をベールがかかったように覆い隠している。
例のしつこくつきまとってくる同級生かとも思ったが、冬馬の高校のブレザータイプの制服とは違い、少女が身に着けているのはセーラー服だ。髪の長さも肩より短く、ボーイッシュな雰囲気。冬馬が知る人物とは異なっている。
しばらく目を細めて観察してみたが、知り合いではなさそうだ。
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