2 桜

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 家族が別れることになり、楓と桜は自分たちから離れた。それでも楓は桜がいたから、桜は楓がいたから、毎日を生きてこられたのだと思う。苦労はしたかもしれないが、幸せだったんじゃないかと思う。楓はそういう人だ。  それなのに、予告なくライトを落とすかのごとく、楓を失ってしまった桜は――。 「……?」  と、先ほどまで彼女が座っていた丸椅子の横に、バッグが置かれていることに気がついた。 「桜、鞄忘れていった……?」 「え? あぁ本当だ。なにやってるんだ」 「ちょっと行ってくる!」  追いかけて届けようと、慌てて席を立った。  病院内で少女の姿を探しながら、動線を辿る。エレベーターから降りて、病院のエントランスまで来て立ち止まった。  ――桜の様子、どこか変だった気がする。  あんな、すべてをやりつくしたような、疲れた顔をして。  入り口にいた案内役のスタッフに、こんな年恰好の女の子が通らなかったかと尋ねたが、見ていないという。  嫌な予感がして、病室のある階へと急いで引き返した。
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