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3 冬馬
「藤川くん……お父さんの具合、大丈夫なの?」
冬休みが開けて、学校で久しぶりに会った蓮田は、心配そうに首を傾げた。
「し、知ってるんだ……そのこと」
「うん、新聞で見たから……」
地域新聞おそるべし。結構、読まれてるもんなんだな。
冬馬は、傷つけたままにしていた蓮田奈菜を呼び出して、今までの非礼を詫びた。
好意で手紙をくれたのに酷い態度をとったこと。ストーカー扱いして、いたずら電話の犯人と決めつけ、責めたこと。
あの無言電話は、夏樹のストーカーと化した根本がやったことだったのだ。
「本当に、ごめんな……。なんて言ったらいいか」
反省はしている。だけど、彼女なら許してくれるかもしれないと考えてしまう自分も、大概ずるくて、うぬぼれている。
正々堂々と相手の顔を見ることもできずに、言葉を詰まらせていると――なんと蓮田は顔をくしゃりと歪ませ、泣きだしてしまった。
「な、泣くなよ……ごめんって……」
いっそう焦って言い募ると、彼女は出会ってから初めて見る激した表情で、食ってかかってきた。
「藤川くんはさ。いつも冷たくてさ。意地悪だよね!」
「う、うん……それはわかってる」
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