3 冬馬

1/7
前へ
/104ページ
次へ

3 冬馬

「藤川くん……お父さんの具合、大丈夫なの?」  冬休みが開けて、学校で久しぶりに会った蓮田は、心配そうに首を傾げた。 「し、知ってるんだ……そのこと」 「うん、新聞で見たから……」  地域新聞おそるべし。結構、読まれてるもんなんだな。  冬馬は、傷つけたままにしていた蓮田奈菜を呼び出して、今までの非礼を詫びた。  好意で手紙をくれたのに酷い態度をとったこと。ストーカー扱いして、いたずら電話の犯人と決めつけ、責めたこと。  あの無言電話は、夏樹のストーカーと化した根本がやったことだったのだ。 「本当に、ごめんな……。なんて言ったらいいか」  反省はしている。だけど、彼女なら許してくれるかもしれないと考えてしまう自分も、大概ずるくて、うぬぼれている。  正々堂々と相手の顔を見ることもできずに、言葉を詰まらせていると――なんと蓮田は顔をくしゃりと歪ませ、泣きだしてしまった。 「な、泣くなよ……ごめんって……」  いっそう焦って言い募ると、彼女は出会ってから初めて見る激した表情で、食ってかかってきた。 「藤川くんはさ。いつも冷たくてさ。意地悪だよね!」 「う、うん……それはわかってる」
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加