3 冬馬

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「私、たくさん傷ついた。辛かった。いっぱい泣いた」 「うん……、うん……」 「もう藤川くんなんて追いかけるの止めようって思った。だけど、でも、できなかったの。藤川くんがいると目で追っちゃって……藤川くん酷いって……藤川くんが……冬馬くんが好きで……好きだから……うぅぅ、うううううう」  褒めるのか貶すのかどっちかにしてくれ。いやむしろ貶してくれ。  猛烈に気恥ずかしかったが、冬馬は最後まで聞き届ける覚悟を決めた。思いの丈を吐き出してもらって、いっそ殴られても構わない。 「私が野球部の応援に行ってたの、冬馬くんのためだって知ってた?」 「知ってたよ。夏休み中の練習も、見に来てくれてただろ」  真夏の暑い中、立ちっぱなしで見学していて、熱中症で倒れたことも覚えている。保健室に運ばれて、大事には至らなかったらしいが、それから通常練習の応援活動は禁止とされた。他の選手も割を食ったと、チームメイトから責められもしたのだ。 「調子に乗ってたけど……ほんとは嬉しかったんだよ」  腐っていなかった初期の頃は、それなりに意識していたことを思い返す。カッコつけて、つっぱってはいたが……。  それを聞いた蓮田は、顔を上げた。
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