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「え……? そう? そうなの……?」
「う、うん……」
「応援、少しは力になってた?」
「だから……うん……」
「そうなんだ……。冬馬くん、全然態度に出ないから……私のしたこと、全部迷惑だったんじゃないかって思ってて……。だけど意識してくれてたなんて、嬉しい……!」
彼女は頬を染め、嬉々として目を輝かせている。あれ、涙はどこへ消えたんだろう……。
だけど、これだけは伝えなければ。初心に戻って、冬馬は前を向いた。
「今さらだけど……ありがとう。蓮田さん」
「……!」
蓮田はますます顔を赤くして、糸が切れたように座りこんでしまった。
まるで未知の生き物だ……。触れていいものか悩みながら、手を差し伸べ、彼女を助け起こす。
握った彼女の手は自分よりも細くて小さくて、そして柔らかかった。
冬馬は少しだけ、「可愛いってこういうことか」と、女子への認識を改めることになった。
これからの毎日は、なにかが変わるかもしれない。
なんだか自分が弱くなったような気もするけれど――それがいい方向への変化であることを願うとともに、そうに違いないという確信もあった。
そして、その日、度肝を抜かれるニュースが飛び込んできた。
担任の斉藤洋子が、結婚するという。少し前にしたお見合いがうまくいって、スピード結婚するとかなんとか……。
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