約束

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私と椿は桜の木の下に座り込んで空を見上げていた。 キラキラ輝く木漏れ日の先にある青い空はたまらなく綺麗だと椿に教えてもらったから。 会話もなくただ空を見ているだけなのに、私の心は満たされていた。 (前だったらこんな木漏れ日注目もしなかったけど、椿が教えてくれた途端に素敵なものに変わってしまった。なんだろう。心がポカポカする) 長らく人との触れ合いに飢えていたせいか、椿やクラスメイトたちとの交流は新鮮で楽しかった。 椿と出会って私がどんどん作り変えられていっている。 それが嬉しかった。 「ねえ椿、わたの渡したリストはどう?消化できそう?」 そう聞くと椿は苦笑いして答えた。 「先生に止めらめて、まだ一つも・・・でも桜が頑張ってくれているから僕もがんばるよ」 椿の体調は聞いていないからわからない。だけどあのリストは椿の体に負担をかけてしまうものだったらしいことは分かった。 「じゃあさ、私もう一度かんがえてみていい?椿にしてもらいたいこと、他にもあるから」 わたしはそう言うとすっと立ち上がり椿に手を差し伸べる。 「私はもう帰るから、椿も病室に戻った方がいいよ」 私は先生の話を聞いてしまったから、椿の体調が急に心配になったのだ。 だけど椿はその手を取らなかった。 「僕はもう少しここにいる。病室は息がつまるんだ。桜は明日もここにくる?」 私はもちろんと言い、椿に無理強い出来ず、後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去った。
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