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翌日、クラスメイト達の誘いを断って私はいつもの場所にやってきた。
だが、そこに椿はいなかった。
(どうしたんだろう?検査か何かで出て来られないのかな)
私は悩んだがしばらくそこで椿を待つことにした。
持ってきた文庫本を読む。読みながらも病院の入り口を何度も確認してするが、お目当ての人物は出て来ない。
しばらくそうやってソワソワと本を読んでいると1人の女性が私に近寄ってきた。
「こんにちは、貴方が桜ちゃん?」
私は突然話しかけられて驚いだが、すぐこの人はつばきのお母さんだと分かった。
目元や口元が椿と瓜二つなのだ。
「はい・・・はじめまして。椿のお母さんですか?」
わたしは考えながらゆっくり答える。
何か椿にあったのではないかと思うとすごく怖かった。
「いえね、最近椿が毎日楽しそうにしていて、突然メロンを1玉全部1人で食べたいって言い出したり、あまり読まなかった純文学の本を欲しがったり、とにかく突然だけど急に変わって驚いていたの。なかなか理由を教えてくれなかったけど、今日ようやく白状したのよ。新しいお友達ができたって」
(新しいお友達・・・)
その言葉は私にとってとても嬉しいものだった。
「椿も私のこと友達と思ってくれていたんですね。嬉しい」
そう言って微笑むと、椿のお母さんも優しく微笑む。
(ああ、椿の微笑みだ)
ただでさえ似ているのに、笑うとそれは椿の微笑みに感じるくらい椿ににていたのだ。
「お隣いいかしら?」
椿のお母さんはそう言って腰掛ける。
「ええと、どこから話そうかしら。桜ちゃんは椿の病気のことは聞いている?」
私は首を振る。
「そう、あの子が話していないなら私から伝えるべきではないわね。ねえ、桜ちゃん、もしも・・・もしもよ、椿がもうすぐいなくなると知ったら今まで通り椿と接することができる?」
椿のお母さんは淡々と話すが、私が考えないようにしてきたことを突きつけられて息を呑む。
(椿がもうすぐいなくなる)
それはとても悲しく恐ろしいことだった。
「もし本当にそうなら、私は今までのように接することは難しいと思います。きっと椿に気を遣って、椿を落胆させる」
そういうと私は持っていた文庫本をギュッと強く握りしめた。
「ねえ、今日は椿熱がでて病室から出られないから病室まで来てみない?桜ちゃんが良ければ・・・だけど」
私はすこし考えた。
椿はこの桜の木の下で会いたいと言っていたから。
「あの・・・椿はもう病室から出られないんですか?」
恐る恐る聞くとお母さんは悲しげに頷いた。
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