椿

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「寿命が要らないなら僕にちょうだい」 か細い声が後ろから聞こえてきた。 振り返るとそこには棒のように細い手足とやつれた頬、帽子を被った男の子が佇んでいた。   「君は蝉の精霊?私の寿命持って行ってくれる気になったの?」 私はその少年に問いかけると彼は笑った。 「蝉の精霊なんて縁起でもない。僕はもっともっと生きるつもりだよ。まあ、君ほどと言わなくてもあと数年はがんばるつもり」 (あと数年・・・) その言葉で彼が何か重い病気を患っていることを簡単に連想させた。 「寿命の交換はどうすればできると思う?」 私が尋ねると少年はしばし考えて、答える。 「きっと儀式が必要だよ。人間の寿命を入れ替えるんだから、特別な何かが必要になると思う」 「魔法陣を書いてその上で血の契約をかわす・・・とか?」 私も考えて答える。 少年はそれを聞くとクツクツ笑った。 「僕は榊椿、12歳、そこの病院の201号室に入院しているよ」 少年が自己紹介をしたので、そういえば自己紹介していない事に気がついて名のった。 「七瀬桜、12歳。青葉小学校に通っているよ」 そういうと言うと椿は眩しいものを見るように目を細めた。 「小学校、あまり行ったことないんだ」 「退屈な授業を聞かされて、興味ない同級生の話聞いてとにかくつまんない場所。ああ、でも給食はおいしいからそこだけは良いよ」 そういうと椿は目をつむって微笑んだ。 「退屈で素敵な場所なの分かるよ、あーあ、僕もまた給食食べたいな」 椿がそういうと私はすかさず、 「でもとんでもなく暇な場所だよ」 そうしかめっつらをして言った。
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