9人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
どれくらいそうしていただろう。
どっぷりと日が暮れた後に椿の父親らしい人が集中治療室に飛び込んで行った。
寄り添う椿のお父さんとお母さんは2人とも笑顔だった。
それは私が喉から手が出るほど欲しい光景。
私はそれ以上見ていることが出来ず病院を後にした。
家に帰ると珍しく灯りが付いていた。
(お父さんかお母さんが帰ってきてる?)
そうっと鍵を開けて家にはいる。
(こんなに遅く帰ってきたからしかられる?)
私は少し緊張しながら扉を開けた。
そこにはお酒を飲んでいるお父さんとお母さんがいて、私がリビングに入ってきても見ることも声をかけてくれることもなかった。
「桜、私達もうすぐ離婚するから」
喉がカラカラになってうまく喋れない。
「なんで・・・」
私がやっと質問すると、お母さんが答える。
「あの子が死んだ後わたしは抜け殻になった。今もそう。桜が小学校を卒業するまで待って離婚することになっていたの」
小学校卒業は後わずか。
その後はお父さんとお母さんは離婚して家族がバラバラになってしまう。
「私はどうなるの?」
そう問いかけると、残酷な答えが返ってきた。
「椿はおばあちゃんがこの家に越してくるからおばあちゃんと暮らすのよ。中学に入るタイミングだからちょうどいいでしょ。お金だけは出すからせめて大学は卒業してよね」
それだけ言うとぐいとコップに残ったお酒をあおるとさっさとリビングを後にした。
「お父さん」
私が縋るように話しかけると、お父さんは残酷な言葉を吐く。
「あの時、あの子はお前が殺したんだ。だから家族がバラバラに・・・お前が死ねばよかったんだ」
そういうと部屋から出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!