レコーダー

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『おはよう桜、今朝はすごく気分がいいんだ。だからメロンを頑張って食べてみようと思っているよ。お母さんが買ってきてくれたんだ。僕もメロンは大好きだからきっと食べ切れると思う』 『おはよう桜、昨日はメロンだべきれなくて今日も食べているよ。昔に比べて食べられる量がかなり減っちゃったから、数日かかるかも。でも食べ切ったらリスト達成になるよね』 『こんにちは桜、今日はなんだか眠くて、気がついたら昼になっていたよ。怠惰な生活を送ってるなあ。僕も桜みたいに活動的に生活したいよ。学校もまた通いたいし、やりたいことがいっぱいなんだ』 レコーダーには椿の声日記が録音されていた。 私は一気に聞くのが怖くて毎日少しずつ聴いている。 声にはりのある日はホッとし、弱々しい日は次の音声を聞くのが怖くなる。それの繰り返しだった。 (椿は今も病院で病気とたたかっている・・・。私は健康で住む家もある。心を強く持って生きていかないと) 両親に見捨てられたことはすごく苦しいけれど、それでも、やりたいことも、行きたい場所もたくさんあるのに、それが叶わない椿に比べれば随分贅沢な悩みだということがわかるから。私は心の底から励まされた。 「椿に会いたい」 そう思うと涙が止まらなかった。 あの細い手をもう一度握りたい。 優しい笑顔をもう一度見たい。 そんなことばかり考えながら毎日を過ごしていた。
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