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「ねえ、これは何?」
椿は私が持っていたリコーダーに興味を持ったようだ。
「これはね、リコーダーって言って、息を吹き込みながら横に空いてる穴を指で塞いで音を出す楽器だよ」
「桜吹けるの?聞いてみたいな」
椿にお願いされたから私はリコーダーを拭くことにした。
実はリコーダーには自信があって、クラスでも音楽の授業でお手本で皆んなの前で吹いたりすることもあったからだ。
「じゃあ桜を吹くね」
私は何か共通のテーマがある曲がいいなと思い、それを吹くことにした。
サクラサクラ・・・
どこか侘しいその曲を椿は体育座りをして、真剣に私の指遣いを見つめていた。
(不思議だな。みんなの前で吹くのは緊張しないのに、椿の前では緊張しちゃう)
私は椿に良い音を聞かせたくて全神経を指先に集中させて吹いた。
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