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しばらく私は椿の泣き顔を見ながら途方にくれていた。
6年生にもなると、周りで泣く子なんてそうそういないから、扱い方がわからなかったのだ。
(なぐさめる?一体何を?はげます?一体何を?)
色々なことをグルグル考えるが、それは一つもカタチにならず思考は椿の涙のように頭の中からサラサラと流れていった。
しばらく呆然と椿をみていると、気持ちが落ち着いたのか、涙が止まった目尻をぐいと擦って椿は私を見た。
「ごめんね、突然泣いちゃって、ビックリしたよね」
椿はバツの悪そうな顔をして私に謝る。
別に悪いことはしていないからそんな必要はない。
そう言いたかったけど、喉の奥がカラカラして言葉がうまく出てこなかった。
「初めてだったんだ。小学校のものに触れたの。勉強は教えてもらってやっていたけど、リコーダーとか、そう言う小学生っぽいものは初めてだったから、なんだか嬉しくて、涙が止まらなくなったんだ」
椿の涙が悲しみから来たものではないということはわかったが、いまいち腑に落ちなかった。
喜びだけではない感情が隠されている気がしたからだ。
「嬉し泣き・・・そっかあ。うまくなぐさらめられなくてごめんね、こう言う時、私みたいなコミュ障は上手い言葉がでてこないのが困っちゃう」
私はできる限り明るい声を出して言った。
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