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刹那のあと、その場に居たのは魔法少女フラワーカメリアと距離を取っていたびいのふたりだけ。
「ローザ……純花さんは!?」
我に返ったカメリアが周囲を見回すが、ソーンローザもワスプもその気配すら残っていない。
「ソーンローザは直撃する寸前にワスプの造ったゲートを通ってフラワー王国の何処かへ逃げたびい」
「そっか……良かった。でも、ゲートか。そんなのあるんだ……」
「びいもゲートを作って人間界へ来てるびい。シードの騎士はみんな出来るびい」
「騎士って」
「びいはこう見えてもフラワー王国の魔法少女に仕える騎士なんだびい」
ドヤ顔で胸を張るびいについ笑みを零してしまうカメリア。
「あ、今びいを馬鹿にしたびい!?」
「そそ、そんなことないけど……さあ? でも騎士って……」
「ほらほら今だって笑ってるびい!」
「んもー、いいじゃん! それより……びいもゲートを開けるんなら……ワタシもフラワー王国に行けるんだよね」
カメリアの神妙に変わった声色に、びいもまた真剣な面持ちで答える。
「もちろん、びいはカメリアの騎士だびい。……ワスプとローザを追うびい? 放っておいてもまた来るに違いないびい」
「ワタシもそう思うよ。でも……受け身なだけじゃ駄目な気がするんだ。これはローザ、純花さんとワタシの、ふたりの問題だから」
彼女とは“決着”を付けなくてはいけない。
そんな予感があったけれどもカメリア、乙女は心のなかに浮かんだその言葉を敢えて飲み込んだ。
すべきと思ってはいても、それがどのような形になるのかまだ想像出来ていないのだ。焦りは不吉な結果をもたらしかねないという不安もあった。
しかし、それだけではない。このとき乙女はまだ気付いていなかった。
未知の力を手にした己が、殴らないと決めた魔法少女が、だからこそ新たな戦いを欲しているという事実に。
「わかったびい。びいも全力でサポートするびい!」
「ありがとう、びい。それじゃ、いっくよー!」
夏休みも半ばのある日、空手の全国大会に出場していたふたりの女子中学生が帰宅せずそのまま失踪した。
大人顔負けの空手家である彼女らが揃って何処へ消えてしまったのか、それを知る者は……まだいない。
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