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フラワーカメリアを中心に膨大なハニーフォースが渦巻く。それらは旋回し、拡散を妨げるように緩やかに内へと向けて凝縮し、それでも溢れては天へと向けて少しずつ流出する。
まるで開花を待つ蕾のように。
「こ、これは……まるで初代魔法少女フラワーシャインだけが使えたという伝説の防御技だびい!」
興奮気味なびいの言葉にワスプが目を剥いた。
「は……? おい働き蜂お前今なんつった!?」
「びい!? ……えっと、“煌めく蕾”っていう伝説の防御技があるんだびい……」
「その前だボケェ! 初代魔法少女の名前だ!」
「フ、フラワーシャインだびい……」
「マジかよ、クソが」
ワスプはもはや聳え立つと言っても良い規模に膨れ上がったハニーフォースの蕾を見上げて舌打ちする。
「おい働き蜂、そいつはもしかして、敵を殴らなかったんじゃねえか?」
「よくわかったびい。フラワーシャインは敵のあらゆる攻撃を受け止め耐え抜いて追い返した、非暴力不服従の魔法少女だったって伝説だびい」
「ンな奴居るわけねぇだろ脳みそ蜂の巣が! まさか、これは、そうなのか」
人間界の魔法少女アニメの開祖がキューティーシャインでフラワー王国の初代魔法少女がフラワーシャイン。古くからあるにも関わらず今日まで聞くことのなかった、しかしよく似たふたりの名前。それを偶然の一致で流してしまうほどワスプは不用心ではなかった。
ましてやそれがどちらも殴らない魔法少女だというのであれば尚更だ。
キューティーシャインは魔法の力で全方位攻撃を行う。伝説のフラワーシャインは敵の攻撃に耐えて追い払ったらしいが、攻撃をしのぎ切ったから敵が素直に撤退したなんて都合のいい話が本当にあるか? ワスプは自分が侵略者だからこそ、その疑問を軽視しない。
もしアニメの魔法少女キューティーシャインのモチーフがフラワー王国初代魔法少女フラワーシャインだとしたら、彼女は敵の攻撃に耐えただけでなくこの蕾を攻撃に転化出来たはずだ。
ならば今から来るのは……。
ワスプは弾丸のようにローザ目掛けて飛び出した。同時に響く声は問答無用の勝利宣言。
「全てを包み込んだ蕾を今、解き放つ! 大輪開華!」
カメリアを軸として渦巻く琥珀色の波動が、花開くように周囲を薙ぎ払った。
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