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「別に話しかけるなとは言ってないよ。ただ、何か用があるのかなって」
「そっか。ねぇ、新入生歓迎会、一緒に行かない? 」
私を無視して会話が進む。
うん、別にいいけどね。美人さんはこっちなんて見てないし。
チカは面倒くさそうな表情を向けてくるが、私にどうしろと言うんだ。
「いや、遠慮する」
「え、何で?」
断ったチカに驚く美人さん。
まさか、断られると思っていなかったらしい。
「話がそれだけならもう行くから。おい、お嬢!」
「はいっ」
話を切り上げたチカは少し離れていた私の手を掴んだ。
そのまま引きずられるように連れて行かれる。
「なによ、あの女……まるで流行りの悪役令嬢ね」
耳の良い私には、俯きながら呟かれた言葉がはっきりと聞き取れてしまった。
悪役令嬢って、あの? えっ、私が今流行の悪役令嬢ですか?
どう考えても違うと思いつつ、さっきの美人さんはヒロインと言っても過言じゃないくらい可愛かったと思う。
「チカちゃん、私をだしにするのやめて?」
「や、だって、金かかるじゃん」
チカが誘いを断った理由がソレ。
そこそこ裕福な私の家とは違い、チカは生活費を切り詰めないといけない暮らしだ。
頭が良いチカは奨学金をもらって大学に通っている。
「まあ、良いけど。ところで、履修登録終わった?」
「とっくに。っていうか、明日までだろ」
「え、うそ、そうだっけ?」
大学は自分で必要な授業を受けるため、履修登録を行わなくてはならない。
ついつい面倒なので後回しにしてしまった。
「待ってるから出してきたら?」
別に待っててくれなくて良いんだけど、と思いつつも急いできた道を戻る。
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