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「こんなおっさんの何がいいわけ? 妊娠しなかったら再婚なんて話、そもそもでなかったんじゃねーの? 母さんはそれでいいわけ?」
「奏多! 言いすぎだよ」
奏多くんの肩に手をやり、春風くんが割って入った。
「なんだよ、春風。いいこちゃんぶりやがって。お前だって内心、いいとは思ってねーだろ? 素直になれよ、素直に!」
私は聞いてられなくて、目をぎゅっと閉じる。きっと春風くんも私と同じで、まるく治めようとして自分の気持ちに蓋をしてここにきてるんだ。赤ちゃんの事がある以上、再婚は免れないと思うし、だったらうまく治めようとして自分の感情を飲み込んで、さっき笑顔で挨拶してくれたんだ。そう思うと胸がつきんと痛くなる。
「素直になってるよ、少なくともお前よりは。母さん達も困ってるだろ。もっと視野を広げて周りを見ろよ」
顔合わせのための食事会なのに空気が最悪だ。私はこういうとき、なにもできなくて縮こまるだけ。弱い自分が嫌になる。だけど今、多香子さんのお腹には赤ちゃんがいて、再婚も視野にいれて動いているんだ。私も、家族の一員としてちゃんと意見を言わないと! 私は膝に置いた手をぎゅっと握った。
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