よいこちゃんとわるいこちゃん

2/5
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
「その、未来(みく)はどうなんだ? 再婚には反対か?」 叱られた犬みたいにシュンとして聞くお父さんをみて、私は華子(かこ)みたいにノーとは言えなくなってしまった。 「わ、私はいいよ。その……再婚しても」 前髪をさわりながらそう言うと、お父さんの表情がパアッと明るくなる。 「そうか、そうか! 未来(みく)ならそう言ってくれると思ってた!」 イスから立ち上がり私の頭をワシャワシャ撫でてくるお父さんに、華子(かこ)が食べる手を止めて言った。 「言っとくけど、あたしは反対だからね! お母さんが病気で死んでから、まだ3年じゃん。悪いとは思わないわけ?」 「律子(りつこ)には悪いと思ってる! でもな、お前達もそろそろ大人の階段を上っていく年だろう? 母親がいた方が、なにかと相談しやすいこともあると思うんだ」 「相談しやすい事って?」 ふんっと鼻をならしながら聞く華子(かこ)に、お父さんはしどろもどろになって、小さな声でこう言った。 「それは……ほら、生理とか……」 「はあ!? さいってー! 朝からデリカシー無さすぎなんですけど!」 「ほら、こうやってすぐ華子(かこ)は怒るだろう? だからお母さんがいた方がいいんじゃないかって話になってな……」 「いらねーし! なんなら生理ぐらい自分でどーにかするし! お父さんはあたしを見くびりすぎ!」 キッとお父さんを睨む華子(かこ)に、しょんぼり肩を落として、お父さんは下を向いてしまった。 「でもなあ。未来(みく)はお母さんがいた方がいいと思うだろう?」 上目使いでチラリと私をみる、お父さん。 これ、ノーって言えないやつだ。お父さんのすがるような視線に耐えかねて、私は下を向いて、ボソボソと話し始めた。 「……私は、お母さんがいた方がいいかなって、思ってるよ……?」 「だよなあ! さすが、未来(みく)、分かってるじゃないか!」 お父さんの表情が、再びパアッと明るくなる。 そんな顔されたら、本当は乗り気じゃないってこと、言いづらいな。 私達のお母さんは一人だけだし、そんな急に新しいお母さんだよって言われても、割りきれないし戸惑ってしまうだけな気がする。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!