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「その、未来はどうなんだ?
再婚には反対か?」
叱られた犬みたいにシュンとして聞くお父さんをみて、私は華子みたいにノーとは言えなくなってしまった。
「わ、私はいいよ。その……再婚しても」
前髪をさわりながらそう言うと、お父さんの表情がパアッと明るくなる。
「そうか、そうか! 未来ならそう言ってくれると思ってた!」
イスから立ち上がり私の頭をワシャワシャ撫でてくるお父さんに、華子が食べる手を止めて言った。
「言っとくけど、あたしは反対だからね!
お母さんが病気で死んでから、まだ3年じゃん。悪いとは思わないわけ?」
「律子には悪いと思ってる!
でもな、お前達もそろそろ大人の階段を上っていく年だろう? 母親がいた方が、なにかと相談しやすいこともあると思うんだ」
「相談しやすい事って?」
ふんっと鼻をならしながら聞く華子に、お父さんはしどろもどろになって、小さな声でこう言った。
「それは……ほら、生理とか……」
「はあ!? さいってー! 朝からデリカシー無さすぎなんですけど!」
「ほら、こうやってすぐ華子は怒るだろう? だからお母さんがいた方がいいんじゃないかって話になってな……」
「いらねーし! なんなら生理ぐらい自分でどーにかするし! お父さんはあたしを見くびりすぎ!」
キッとお父さんを睨む華子に、しょんぼり肩を落として、お父さんは下を向いてしまった。
「でもなあ。未来はお母さんがいた方がいいと思うだろう?」
上目使いでチラリと私をみる、お父さん。
これ、ノーって言えないやつだ。お父さんのすがるような視線に耐えかねて、私は下を向いて、ボソボソと話し始めた。
「……私は、お母さんがいた方がいいかなって、思ってるよ……?」
「だよなあ! さすが、未来、分かってるじゃないか!」
お父さんの表情が、再びパアッと明るくなる。
そんな顔されたら、本当は乗り気じゃないってこと、言いづらいな。
私達のお母さんは一人だけだし、そんな急に新しいお母さんだよって言われても、割りきれないし戸惑ってしまうだけな気がする。
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