前編

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前編

 聞いてほしい話がひとつある。  あまりいい話ではないかもしれない。  もう何年も、何十年も遠い昔のこと。  忘れたくて幾重にも蓋をしたはずの記憶が、ちょっとしたきっかけで今もふと顔を出してしまう。  そんな瑣末な私の過去の話。  人によってはそれを「後悔」と、捉えられる者もいるかもしれない。    まだ私だけがずっと亡霊のように同じ場所へと留まっていて、ひとりの存在に捉われているのだから。    
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