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堂々とサラリとした姿で、街を歩く彼女が好きだった。
私は、いつだって彼女を追いかけた。
ただ、私は、彼女に恋愛感情を抱いているわけではない。
私の憧れの先に、いつも彼女がいる。ただそれだけだった。
ただそれだけの理由で、私は彼女を追いかけ続けた。
喧騒とした街中でも、百貨店のショーウィンドウに映る彼女は
ひと際、輝ていて見えた。
光沢のある壁、画面の明かりがついていないスマホ、
手帳についている光沢カバー、どこでも、どんな小さな場所でも
私には、ひとたび、彼女が、反射して映れば、あまりに眩しすぎる光で
周りのモノが全て見えなくなるほどに、輝いて見えた。
私は、それほどまでに彼女のルックスに魅了されていた。
特に、ダンススタジオでの、彼女は、更に輝いて見えた。
スラリとした手と脚が、柔軟に空を切り、宙を舞う姿は、
もはや、「アイドル」の域を超えていて、
1つの芸術的な作品を見ているかと思うほどだった。
前面が全て鏡貼りになっているスタジオで、優美に舞う彼女を見る度に、
私は、ますます鏡に映る彼女の姿に引きこまれていく。
どうやら、人は、鏡の前に立つと、自分では意識していないくても、
少しでも綺麗に見えるように顔を作っているらしい。
しかし、私は、鏡を見るとき、それだけでなく、
なりたい自分、理想の自分の姿を重ねて想像してしまう。
それは、本当の私とはかけ離れている姿だ。
でも、私は追いかけ続ける。完璧な「アイドル」になる為に。
あなたを、理想の私を。
私は、あなたになるために、あなたを追いかけ続ける。
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