バニラ

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 目が覚めて、葉の先端が枯れ始めている観葉植物に水をあげ、蛇口から直接コップに注いだぬるい水を少しだけ飲む。いつからかずっと取れない身体の疲れだけが朝のわたしを出迎えてくれた。買っていたのが遮光カーテンで良かった。心底そう思った。こんな身体が眩しい朝日に照らされてしまえば、気までどうにかなってしまいそうだったから。  理由も根拠も、ない。それでも、ただ、深く静かな場所で生きている確かな心地だけがある。  そしてまた、わたしは夢を見ている。  乳白色のここは、自分の家よりもずっと息がしやすい。むしろ見た目では煙っているようで息苦しそうなのに。なんて、そんなことを思いながら彼を探した。 「今日は何を教えてくれるの」  珍しく、彼からの言葉を待たずに私から口を開いた。奥の方から歩いてきた彼は驚いたような顔をして、そしてきっと、安堵した。 「冷凍庫、とっておきのやつ入ってるよ」
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