最終電車にご注意を

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最終電車にご注意を

 最悪。  最悪だ。  最終電車なのに、座れない。今日はいつもより若い人たちが多い。どこかで男性アイドルの夜公演ライブでもあったのだろうか、装飾した派手なうちわを荷物からはみ出させている、派手目な格好の女子たちもあちこちに見かける。  きっとライブ後に興奮状態のまま二次会でカラオケに行ったりしてさらに盛り上がったんだろうな。  こんなに遅くまで遊び歩いて、人生楽しそうでいいよね。  そんな子たちが大勢いるのに、どうして私なの?  服装も派手じゃない。メイクもナチュラル。髪なんてもうボサボサで、前髪うねってる。この車両の中で一番地味だと言える自信さえあるのに、何でかな?  さっきから真後ろに立ってるサラリーマン。  こいつ絶対私のお尻触ってるよね。  私が何か悪いことしましたか?  群馬の田舎から出てきて憧れの専門学校に入ったけど、卒業したあとも就職先が見つからない21歳の就活浪人ですよ。いつもは真面目にコンビニでバイトしてる。今日はたまたま法事で、実家に呼び出されて手伝いとかいろいろしてきて、でも明日も大事な面接があるからって無理してギリギリで最終電車に乗り込んだの。悪いことなんて一つもしてないよ。    誰か気づいてくれないかな?  辺りを見回してみるけど、都会の人は周囲に無関心だ。  寝てる人も多いし、疲れ切って目が死んでる人がほとんどで、このまま何事もなく一日を終えたいって顔に書いてある。  ああ、最悪だ。  それ以上指を動かさないでよ。  一人暮らしのアパートがある駅まであと40分。  40分もこんなの我慢しなきゃいけないの?  しんどすぎて泣きそうだ。    
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