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恋人が死んだ、らしい。
不幸な事故だったと聞いた。
らしい、というのは僕には恋人の顔を思い出すことが出来ないからだ。
恋人がいた事はなんとなく覚えているのだが、何が好きで、何が嫌いで、どんな人だったのか、遂には性別にいたるまで僕にはほとんど記憶がないのだ。
かけてしまった思い出達。僕は、それを悲しむほどの思い出すらも持ち合わせてなかった。
「あの人は、夜の人だったから」
僕が納得のいかない顔をしていると、共通の友人だったらしい友人はそう言った。
夜の人、という言葉を聞き慣れず首を傾げる僕に友人は言った。
「吸血鬼だよ」
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