1.優しい先輩

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 「あー、・・・何しているんですか。」 深夜、人気のない建物の屋上に立っている男子生徒に話しかけた。 背丈は高く、暗闇の中ではあるが美丈夫であることがうかがえる。  「・・・・・君、あの委員会の人?」  「はい、一応委員長やらせてもらっていて。」 何度か話したことはあるから面識はあるはずなんだけどな、と心の中で苦笑する。俺はこの平凡な顔つき故に人に覚えてもらえないことが多い。 まぁ、それもいつものことだ。 ここに来る人は大体相場が決まっている。 何かに疲れたり、嫌になって、人生を絶とうとしている人たちだ。 この学園は「学生が運営する」を掲げている。実際その方針は生徒を成長させているのには違いないが、一方で運営に積極的に参加している優秀な学生が追い込まれる点で一時期かなり問題になった。  「大丈夫だよ、少し疲れてここにいるだけ。長いお休みをもらおうかなって。」 思い残すことのないような屈託な笑みを浮かべながら、何でもないことのように話した。満月を見上げるばかりでまったくこちらを見ようとはしない。  「・・・・・・・・ちなみにどれくらいですか。」 男子生徒は長ければ長ければいいかも、とだけ言って顔に疲れを滲ませながら笑ってみせた。 彼の明るい表情からはとても今から自分の命を絶とうとしているは感じられない。でも時より見せる何か振り切ったかのような態度が違和感と焦燥感を感じさせる。  「休みが欲しいんですよね?」 俺は彼の言う長いお休みの真意を無視して尋ねる。 彼は一瞬辛そうに顔を歪めたが、俺の言葉を否定することはしなかった。  「・・・・・・・まぁ、そうだね。」  「じゃあ、俺がその休みあげますよ。とびっきり長い。」 そう俺が言うと、満月を見ることをやめて初めてこちらを見た。
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