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春子は、七緒に献身的に尽くす加瀬が大好きで、最後の最後にはこのふたりが結ばれるのだと信じて疑わなかった。実際、前の章まではいい感じだったのである。ところがそこへ思わぬ伏兵が現れた。庭師の市ノ瀬颯斗だ。
「七緒さん。僕はもう庭の手入れができなくなりました」
「えっ、どうして?」
「……この薔薇よりも美しい貴方に恋をしてしまったからですよ。だから、薔薇ではなく、貴方を愛でたい……なんて、庭師失格ですよね」
「そ、そんなこと……ない。だって、俺はずっと……颯斗さんに愛される薔薇に嫉妬してきたんだから……っ!」
何度、読んでも腹がたつ。ふたりの様子を加瀬が物陰からじっと見ている描写も切ない。庭師の颯斗は、今まで一切、七緒に対しそんな素振りはみせてこなかった。むしろ、冷たいほどであった。今思えば、その冷たい態度が伏線になっていたのだろうと思うが、ずっと加瀬を応援してきた春子にとっては許しがたい展開だった。
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