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第十一話 似た者同士
「はあッ! はぁ……はぁ……」
激しい呼吸と心臓の鼓動と共に、ポンは目を覚ます。父と母との最後の光景が、何度も夢に出てきては彼を苦しめる。
こうなってしまうと彼は寝ることができず、布団から出て立ち上がる。
「……ポン君?」
木の向こうから、心配そうな表情のミーリィが現れて声を掛けてきた。
「お前……寝てないのか?」
「嫌な夢見ちゃって……それに、昨日と今日の出来事を色々考えていたら……今までずっと起きていたの」
そう言って彼女は倒木に腰掛けて、彼を手招きする。
「こっち来て、話す? 浴場で何か聞こうとしてなかった?」
そう言われて彼は彼女の隣に座り、しばし沈黙してから切り出す。
「…………お前、本当に何でおれのことを助けようとするんだ?」
それは、彼が彼女に出会ってからずっと思っていたことだった。出会ってすぐでお互いのことをよく知らず、助ければ教団や帝国を敵に回してしまうのに。
「さっきだってそうだ。死ぬかもしれないのに、どうして見ず知らずの人間に命を懸けられるんだよ」
その質問にミーリィは面食らい、少し考えてから言う。
「……そうしなければいけないって思いが半分、そうしたいって思いが半分、かな」
ミーリィは黙り、ポンをじっと見つめる。
「……おい、何だよ」
「……君を見ていると、昔の自分を思い出すなぁ」
一瞬その言葉の意味が分からなかったが、ポンはすぐに理解し、驚きの表情を見せる。
「お前も……おれと同じなのか?」
「まあ、厳密に同じではないけど……お父さんはずっといなくて、お母さんは殺されちゃって、わたしは一人で逃げ出したの。沢山の人に暴力を受けて、碌な食事も服も無くて……でも、わたしには、それが相応しいんだなってずっと思ってた」
「相応しいって……お前みたいな良い奴が……」
その言葉の意味はよく分からずも、彼女の暗い出自にポンは言葉を失う。
「だけどある時、ダスさんに助けられたの。それでファレオとその仕事を知って、『わたしのいるべき場所はここなんだ』って確信したの」
彼女は微笑んでポンを見遣り、続ける。
「身寄りの無いわたしはダスさんに救われた——そして、ダスさんだけじゃない。ファレオの皆が、苦しんでいる人々を助けている。だからわたしは、この死ぬはずだった命を、他の苦しんでいる人のために使いたい。そして、帝国や教団の狙いがあの特別な魔腑で、それを悪用する可能性があるのなら、わたしはそれを止めたい」
「……そうか」
ポンは再び黙って俯く。そんな彼をじっと見つめてはっとし、
「あ、ご、ごめんね! こんな暗い話になっちゃって!」
慌ててミーリィは謝罪の言葉を述べた。
「いや、いいんだ…………出会ったのがお前で、そして協力してくれるのがお前達で本当に良かった」
ミーリィの素性を、己の歩んできた道との近さを知ったからこそ出たその言葉。彼女はそれに頬を紅潮させて微笑んだ。
「わたしも、君に協力することができて良かった」
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