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第七話 親子
巨槍を持って立ち止まるダスに、ポンは言う。
「おれ——いや、おれ達はある時に正体がばれ、長らく教団に追われる身だった。何とか帰ろうと、必死で逃げていた」
ポンは己の両手を強く握りしめて続ける。
「だが、両親は教団に捕まった……おれを、逃がす為に。ジャレンの発言を考慮するに、まだボリアにいると思う」
「つまり……教団から両親を救出してほしいと?」
その言葉に対し、ポンは頷く。
——不可能ではないが、危険ではあるな。
ポンがいるということが分かっている以上、敵は確実に増員している。また、どこに、どのような場所に閉じ込められているか分からない以上ポンにも同行してもらう必要があるが、彼を危険に晒してしまう——などと様々に思案し——
「ダスさん」
そこで、ミーリィに声を掛けられた。彼女の方を向き、その言葉に反応する。
「わたしは、助けたいです」
その顔は、その目は、迷いを感じさせない。そんな彼女の言葉に思わずダスは溜息を吐き、微笑しながら言う。
「まあ……お前ならそう言うだろうと思ったよ」
「教団や帝国のしていることが危険であるのなら、わたしは絶対に止めたいです。それに——」
そう言うと彼女はポンの方を向いて続ける。
「ポン君が、わたし達のことを信頼してくれた。だったら、わたしはそれに応えたい」
「お前……」
その発言に、ポンは言葉を失って立ち尽くす。
「よし、決まりだな。ポン、お前も一緒に来てもらう。牢屋がどういうものかによるが、お前の協力が必要だ。それと……ボリアに戻る前に、一旦チロスに寄る。ボリアで食料やら道具やらを買いきれなかったし、ポンの服とかも買いたいしな。それじゃ、俺は見張りに行く」
そう言ってダスは来た道を戻っていった。ミーリィとポンの二人きりになり、ポンは躊躇いつつも意を決して言う。
「…………お前、よく『助けたい』なんて言えるな。おれなんて見ず知らずの奴だろうに」
「ほ、褒めても何も出ませんよ……えへへ」
そう言ってミーリィはポンの頭を優しく撫でる。
「別に褒めてない、やめろ」
彼女の腕を払い、草と落ち葉で緑に染まった地面の上に座る。
「まあでも……元々は行く予定なんて無かったのに、本当に悪いな、ミーリィ」
「大丈夫だよ。君のお父さんとお母さんを助けられないことの方が、君にとっても、わたしにとっても辛いから」
そう言って彼女も座り、ポンをじっと見つめて、先程の会話のあることに気づく。
「あれ? ポン君さっきわたしのこと『ミーリィ』って呼んだ?」
その言葉に、彼は後方を向いて無言を貫く。彼自身、意図せずして言ってしまった。
「いやぁようやく信頼関係を築けてきた、って感じだねポン君! 次はわたしの裸を見せれば——」
「やめろ! てめぇおれを何だと思ってる!?」
思わず顔を紅潮させてポンは叫んだ。ミーリィの存在もあり、なんだかんだ馴染んでいったポンであった。
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