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運動会のことを手紙で書いてから一週間後。
「大変だ大変だー!」
「だから嘘なんてつくとろくなことないって言ったじゃない」
ユキの小言を無視して、僕は必死で工作をしていた。
固く丸めたティッシュにもう一枚のティッシュをかぶせてゴムで縛り、マジックペンで顔を描く。いわゆる「てるてる坊主」だけど、普通とは少し違う使い方をするつもり。
——どうして僕がこんなことをしているかというと、原因は前の晩にサトミちゃんから届いた手紙にある。
【実は来週、家族で東京に行くことになりました! コウタくんの運動会、応援に行ってもいいかな?】
サトミちゃんと会えるのは嬉しいんだけど、よりによってどうしてこんな時に。
僕がほんとは運動音痴だと知られたら、サトミちゃんに嫌われちゃう!
「ねえ、そんなの作ったって意味ないでしょ。諦めなよ」
「やだね! 僕は最後の瞬間まで絶対諦めない!」
ユキは呆れた様子だけど僕は真剣だ。完成した人形をカーテンレールに吊るす。普通なら顔が上になるように吊るすところ真っ逆さまにして……。
「よし、できた!」
ぱんと勢いよく両手を合わせ、全身全霊で願い事を捧げる。
「ふれふれ坊主さん、大雨で運動会を中止にしてくださいっ!」
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