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「お主ら人間の作るふれふれ坊主は、ほとんどが何の役にも立たない半端者だ。
だが、稀にどうしても雨を降らせたいという強い願いを抱いた者だけが我輩を呼び出し、一度だけ願いを叶えることができる」
一度だけ、願いが叶う。
「てことは……」
不気味に光る二つの黄色い目を恐る恐る見返しながら、僕は尋ねる。
「ほんとうに、次の日曜に大雨を降らせてくれるんだね」
「強く願うならな。引き換えに何を失ってもいいと思うくらい、強く」
「うん! 願うよ!」
ふれふれ魔王さんの黄色い唇が、にやりと三日月型に曲がった。
「よかろう。凄まじい豪雨を呼び出し、運動会を中止に追い込んでやる」
「やったー! ありがとう!」
叫びながら窓に駆け寄って、真っ黒な体を両手でぎゅっと握りしめる。
「く、苦しい! やめろ!」
「あ、すみません」
声や喋り方は怖いけど、体は脆いティッシュの人形のままみたいだ。
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