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翌日の朝─…
家中に鳴り響くインターホンの音で起きて、律希さんと二人で玄関に向かえば、泣き顔のミナちゃんが逸希さんと共に現れ─…
「あや姉っ!!!」
私を見るなり抱きついて離れない彼女をみて、一体何事かと律希さんに視線を送る。
「絢音さんもう身体は大丈夫?高熱で寝込んでるから一日、実夏ちゃんを預かって欲しいって、昨日兄貴から連絡がきて…心配したよ」
逸希さんのその発言に苦笑いを浮かべる律希さん。…どうやら私は高熱で倒れ寝込んでいたという設定にされていたらしい。
『もうすっかり良くなりました。ご心配お掛けしました……ミナちゃんも、ごめんね?もう大丈夫だから、泣かないで?』
ヨシヨシ…っと髪を撫でても泣き止まないミナちゃん。律希さんがミナちゃんを抱き上げようとしてもそれを拒否して私にしがみついて離れようとしない。
「昨日の夜から”もう帰る”の一点張りで。結局こんな朝早くから送ることになって…申し訳ない。まだ体調、万全じゃないでしょ?兄貴にいっぱい甘えてゆっくり休んでね」
いつの頃からか…逸希さんの私に対する刺々しい態度が無くなった。今ではこの通り、私のことをいたわってくれる優しい義理の弟というポジについている。
『ありがとうございます、逸希さん』
せっかく私のことを信頼してくれたのに、結局裏切ることになってしまって本当に…ごめんなさい。
「あや姉、お布団行こうっ…お熱でしょ?」
私の手を引いて歩く実夏ちゃんの背中を見ながら、胸がギュッと苦しくなる。
──…大好き、
同情なんかじゃない、本当に本心で。いつの間にか私の中で実夏ちゃんという存在は自分よりも大事だと思える存在になっていた。
たくさんの人に最低だ、間違っていると言われても、やっぱり私は実夏ちゃんのことを守りたい。何も無い私のしょーもない人生の中で唯一、守りたいと思えた宝物。いつか時が経って彼女が大人になった時、私のしたことを受け入れて許してくれることを願って─…手放そう。
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