Ayane

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平日はバタバタと三人で笑いあって過ごし、週末は律希さんと出掛けて─…たまに身体を重ねたり。 そんな日々を過ごして…律希さんと偽りの約束を交わしたあの日から一年と半年を迎えた日、実夏ちゃんを寝かしつけたあと、一枚の紙を手に持って律希さんの待つリビングへ向かった。 「…絢音、ありがとう。」 実夏ちゃんを寝かしつけたことに対して、律希さんからお礼の言葉が飛び出したところで…ダイニングテーブルでパソコンと向き合い仕事をしていると思われる彼の目の前に…離婚届を差し出した。 既に私が書く欄が埋められている離婚届(ソレ)を見て、律希さんの動きが止まった。 彼の向かいの席に座り、黙って私のことを見つめている律希さんにただ一言─… 『離婚、してもらっていいですか?』 この一言を言うのに、とても時間がかかった。寂しいって気持ちはもちろんあるけどそれ以上に”やっと言えた”という解放感のようなものに包まれ、思ったよりもずっと冷静に伝えることが出来た。 「……悪い、、よく理解…出来ないっ、」 突然のことに混乱しているのか、パソコンを閉じてそばに置いてあった水を一気に飲み干した律希さん。普段冷静で落ち着いている彼がこんな風に取り乱す姿を見ていると…こちらは逆に平然として居られる。
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